■“クエイク”ってなぁに?
コンシューマゲーム誌で連載された読者参加型ゲームは、折からのコンピュータRPGブームにのってRPG風ファンタジー世界を舞台にした冒険ものが主流であった。読者はRPGのようにキャラクターを作り、毎号雑誌上で紹介される冒険に挑むためにキャラクターの行動を書いて(大抵は用意された選択肢から選ぶ)往復ハガキを出し、その結果、返信ハガキで経験値や入手したアイテムのデータが返って来て、それを使って成長したキャラクターをまた次の応募に使用する、というのが当時の読者参加ゲームのスタンダードであった。(この節以降、このように読者が自分の操るキャラクターを自ら作ってゲームを行う形式の読者参加型ゲームを「キャラクター登録型」と便宜上呼称する)。
キャラクターが冒険に成功するかどうかはキャラクターの能力値から導き出され、それを判定するためのルールは読者参加型ゲームごとに違い、ルールが簡易なものもあればテーブルトークRPGやプレイバイメール並に煩雑なものもあった。各キャラクターの冒険の結果はただの数値だけでなくゲーム世界のストーリーを動かす要因にもなった。用意された選択肢を選ぶだけとはいえ、それを選ぶキャラクターは数百人以上いるのである。当然、相反する選択肢を選んだキャラ同士は戦いが起こることになり、どちらのキャラが勝利したかによって世界の様相は変動していく。ストーリーの変容の中でもっとも活躍したキャラクター(要するに最も高度に判定に勝利したキャラクター)は雑誌上に掲載されるイラストストーリーなどに登場し、ゲームに参加している読者たちの誇りとなった。
この時期の読者参加型ゲームの主流が、RPG風のキャラクター登録型だった理由の一つに、ゲームの多くがコンシューマゲーム誌で連載されていたこともある。一応はコンシューマゲーム誌なわけで、いわゆる「コンピュータゲームに似た空気」が読者参加ゲームには求められたのである。コンプティークで連載されていたロボクラッシュやトップをねらえ!などはRPGというよりシミュレーションゲーム的なノリであったが、当時はコンシューマゲームではシミュレーションゲームというジャンルの認知度が低かったのもコンシューマゲーム誌でRPG風味の読者参加型ゲームが中心になった理由である。
また、コンシューマゲーム誌に限らずこの当時はテーブルトークRPG誌でも盛んに読者参加型ゲームが連載されていたが、こちらはキャラクター登録型が主流なのは変わらなかったが、SF戦記モノや美少女モノなど、当時のRPGの王道であった
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ファンタジーなノリとはあえて違う方向を目指すことが多かった。これには雑誌の読者の年齢層の違いというものも含まれているとは思われる。当時のコンシューマゲーム誌は小学生〜中学生くらいの低年齢層が読者の中心だったため、雑誌の読者に理解しやすいテーマとして王道ファンタジー物が好まれたと言えるだろう。
「コンピュータゲームに似た空気」を持たせることのメリットには、その読者参加型ゲームを実際にコンシューマゲームのRPGとして発売することが容易だということもあった。この時期は「ファージアスの邪皇帝」「ダブルムーン伝説」など多くの読者参加型ゲームがコンシューマゲームとメディアミックス展開を行った。
キャラクター登録型の読者参加型ゲームのゲーム性は後のゲームほど複雑化していき、読者同士でチームを組んだり、プレイバイメールのように自由な行動を可能とするものも増えていった。しかし、読者参加型ゲームの参加人数が増えていくにつれ、それを処理する側の負担も増えていった。有料のプレイバイメールと違い無料の読者参加ゲームは多くの参加者をひきつけた一方で、煩雑化に対応するためのコストがかけられないというジレンマがあったのである。このこともあって、1990年代の半ばになるとキャラクター登録型の読者参加型ゲームは急速に失速することになる。RPG的な空気を持たなくてはコンシューマゲーム誌の雰囲気にはあわないということもあり、多くのコンシューマゲーム誌からキャラクター登録型の読者参加型ゲームは消えていった。
ただし、現在でもパソコンゲーム誌やアナログゲームを扱う雑誌では、比較的難解なルールを持つキャラクター登録型の読者参加型ゲームが連載されている。近年ではRPG的というより、より対戦ゲーム的な要素を持つものの方が目立つようになっている。
キャラクター登録型の冒険RPG風の読者参加型ゲームが主流の1992年、マル勝PCエンジン誌に「女神スタジアム」という新しいタイプの読者参加型ゲームが登場する。これは、読者のキャラクターを活躍させるのでなく製作側が用意した数人のキャラクター活躍させてストーリーを語っていくというゲームであった。どのキャラクターが活躍するかは読者の応援ハガキにより決まるため、読者は好みのキャラクターを活躍させるべくハガキを送ろうというのがコンセプトであった。つまり、人気投票を行いその結果でストーリーが変化するという形式の読者参加型ゲームである。(この節以降、このように読者による人気投票を主体とする形式の読者参加型ゲームを「
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」と便宜上呼称する)。この「女神スタジアム」以降、このような人気投票型読者参加型ゲームが他にも増えていくことになる。
人気投票型読者参加ゲームは、読者が自分が活躍させたいキャラクターを一人選び、投票数に従いキャラクターの活躍の度合いが決定されるというのが基本的な流れである。読者が行うことは人気投票に参加するだけという手軽さが売りだが、ただの投票には終わらないようにゲーム性が工夫されているものも多く存在する。
ゲーム性の工夫としてよくある物が、キャラクター同士がなんらかをめぐった争奪戦のライバルとして対立しているような構図になっているものである。どのキャラクターがその争奪戦で有利に立てるかは投票数によって決まる。純粋に投票数だけで争奪戦の有利不利が決まるものもあれば、RPG型と同じくキャラクターに能力値を設定して行為判定による対決で争奪戦の順位を決定するものも存在する。このとき、そのキャラクターの投票数が行為判定へのボーナスとして影響するのが基本である。人気のあるキャラクターはそれだけ強くなるのである(逆に行為判定が行われるゲームでは人気のないキャラクターが逆転することもありえる)。このような争奪戦タイプのゲームでは読者同士が組織票を行うためキャラクターごとの応援団のようなものも誌上のコーナーで発足することもある。「本命であるAというキャラクラーのライバルのBというキャラクターを蹴落とすためにCという
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ーを支援する」などといった戦略もあり、別のキャラクターの応援団同士が連携するなどといったこと良く行われる。
キャラクターへの人気投票を行うだけでなく、「キャラクターたちに対してどういう行動をさせたいか」や[キャラクターたちがどんな事件に巻き込まれるか」などを用意された選択肢から選んでハガキに書いて送ることを主体にしたゲームもある。近年ではこのタイプが人気投票型の主流である。このタイプの場合では、それぞれのキャラクターに対してもっとも応募数が多い選択肢が採用されて次回のキャラクターたちの行動が決定される。そしてその複数のキャラクターたちのそれぞれの行動が一つのストーリーを形作るのである。このタイプのゲームでは「キャラクターの対決における行為判定」のような数値処理が絡む部分をルールとしてデザインする必要がない反面、予想外の選択肢にもストーリーを対応させる高い文芸力が問われる。また、「シスター・プリンセス」や「双恋」などの恋愛ゲーム 的な要素を主体にした人気投票ゲームの場合、ヒロインキャラクターとは別に「主人公」が設定されることがある。そしてこの主人公の行動を読者の投稿で決定するのである。この主人公はヒロインとは違い読者の分身ということで名前や個性は設定されないこともある。
これらの人気投票型のゲームは、応募数が大量にあってもさばきやすいということもあり、製作側からは重宝された。人気投票に対象となるキャラクターたちは基本的にいわゆる美少女キャラが用意されるのが定番だった。これは人気投票を行うのに値するだけの華がキャラクターには必要だったということが大きい。1990年代後半の時期は、電撃G's magazineやE-LOGINなど、アダルトゲームを含む「美少女ゲーム」の紹介を主軸とする雑誌で多くの人気投票型の読者参加型ゲームが展開された。(なお、パソコンパラダイスも1990年代初期から現在に至るまで読者参加型ゲームの連載で知られるアダルトゲーム雑誌だが、この雑誌で行われているのはキャラクター登録型が中心である)